コクヨ× PASS THE BATON
対談記事

コクヨ×PASS THE BATON=「バトンのヨコク」

なぜ、コクヨとバトン?
スクラムを組んで目指す、地域課題の創造的解決
なぜ、コクヨとバトン?スクラムを組んで目指す、地域課題の創造的解決

この春、コクヨとPASS THE BATONが地域課題の創造的解決に向けて、新たな一歩を踏み出します。新たなスクラムに名付けた名前は、「バトンのヨコク」です。
本対談が行われたのは、コクヨの新たなオフィスであり、 PASS THE BATON MARKETの会場としてもおなじみの品川 THE CAMPUS内。コクヨ社長の黒田英邦氏、PASS THE BATONを展開するスマイルズ社長の野崎亙氏が、スクラムを組むまでの経緯やきっかけ、地域に向けるまなざしの理由、描きたいシーンを語りました。

  • 黒田 英邦(くろだ・ひでくに)/コクヨ社長
    1976年、兵庫県生まれ。甲南大学、ルイス&クラークカレッジ卒業後、2001年にコクヨへ入社。オフィス家具部門の法人営業、経営企画部長、コクヨファニチャー社長を経て、15年より現職

  • 野崎 亙(のざき・わたる)/ スマイルズ社長
    1976年、大阪府出身。京都大学工学部、東京大学大学院卒。2003年、株式会社イデー入社。2006年、株式会社アクシス入社。2011年、スマイルズ入社。全事業のブランディングやクリエイティブ統括に加え、外部案件のコンサルティング、プロデュースを手掛ける。

あらゆるビジネスは、「お困りごと」から始まる あらゆるビジネスは、
「お困りごと」から始まる

野崎:対談のはじめに、改めてではありますが、コクヨさんの会社の起源を伺ってもいいですか。

黒田:コクヨという会社は、1905年に創業し、洋式帳簿の「表紙」を作る会社としてスタートしました。当時は薄い紙を貼り合わせて厚表紙を作る技術が普及しておらず、そのニーズに応えるために創業者が会社を立ち上げ、紙製品を作り始め、お客さんのニーズを感じて便箋や文房具へと広がっていきました。

文房具の事業を拡げていく過程で、今度は全国の文具店さんとのお付き合いが始まったんですね。様々なニーズが寄せられたことで、僕の祖父である二代目社長が「オフィス家具も求められている。やってみよう!」と打ち出し、オフィス家具に参入して。当時は紙製品を作っている工場さんに、鉄を使った家具づくりへの転換をお願いしたケースもあって、みんなで頭を下げてお願いしたという伝説が残っているほど、大きな転機でした。
その後、個人向けの製品の展開や、オフィス家具だけでなく空間のデザインをするようになって。お客様のニーズやお困りごとにあわせて、ピボットし続けるといいますか。学ぶや働く、新しいニーズに応え、新しい体験を作ろうとした先に、今の姿があるなと思っています。

野崎:僕は幼い頃から、キャンパスノートに絵ばかり描いていましたけど、コクヨさんのプロダクトって、小さな頃からずっと関与しているんですよね。「学ぶ」「働く」というシーンに限らず、”ゆりかごから墓場まで”じゃないけど、ずっと生活の横に寄り添ってくれている。いわば、インフラに近いような感覚。ものを通じて、生活者がどうしたら豊かに暮らせるかを考え、実践し続けてこられた会社だと思います。

我々PASS THE BATONやスマイルズは、コクヨさんと規模こそ異なりますが、自分たちが世に感じる「なんでこうなっちゃうんだろう?」というある種の「お困りごと」からスタートした事業やブランドばかりなんです。
僕らの場合はどちらかというと、一生活者としての視点が起点になっていますけど、やっぱり世の中のビジネスって、「お困りごと」スタートですよね。

言葉より、シーンで語る。
THE CAMPUSとPASS THE BATON MARKET
言葉より、シーンで語る。
THE CAMPUSと
PASS THE BATON MARKET

野崎:PASS THE BATON MARKETはこの4月で11回目を迎えますが、そのうち8回は、コクヨさんのオフィスであるTHE CAMPUSで開催させてもらって、共催としてご参加いただいてきました。もともとは、ここができる前、黒田さんに「どこかいい場所、空いてません?」ってラフに聞いたのがきっかけでしたね(笑)。

黒田:振り返ってみると、そうでしたね。

野崎:そうです、そうです。ここ品川って、僕らから見ると日本の企業の中心的な場所に見えるんですが、それでいてオフィス立地ゆえ、ライフスタイル的文脈があるかと問われると、ホワイトキャンバス的でまだまだ未成熟と言えます。以前も話しましたが、文化とか街の空気を、むしろここから起こしていくような場所だなと思ったんです。PASS THE BATON としても、2009年に始まって個人と個人をつなぐ存在だった僕たちが、企業と個人をつなぐ存在になっていくタイミングでした。当時のテーマ「日本の倉庫を空っぽにしよう」って、企業が新たなアクションを起こしていくための機会だった。だからこそ、「品川」というビジネスの中心地で、リアルに使われている「オフィス」で、マーケットを開催することがとても必然に思えました。

黒田:僕はね、PASS THE BATON MARKETに来るたびに、「未来だな!」って思うんです。オフィスっていうある種閉ざされた場所へ、休みの日なのに、様々な目的を持った人たちがあんなに集まってくる。PASS THE BATONなんで、やっぱり単なるビジネスじゃなくて、コミュニケーションを大前提としていますよね。ものの背景がしっかり伝わっていく。来場される方も、自分の意思を持って、体験してくれている唯一無二のイベント。
こんなイベントは他にないと思います。

野崎:ありがとうございます。僕らからすると、「冷静に考えて、ここってオフィスなんだっけ?」って思うことが多々あります(笑)。新時代のオフィス。“街に開かれたオフィス”というアイディアを持っている企業はたくさんあるし、物理的にそういう作り方をしている企業も増えていますが、言葉で書くことはできても、眼前でそのシーンが実現しているケースって決して多くないと思います。

黒田:僕たちは今、会社を本気で変えようとしている真っ最中で、THE CAMPUSは、そのための装置です。「コクヨってどんな会社?」を体現して、来社された方に「こんな会社になりたい」って感じてもらいたい。「風通しのいい会社」「挑戦が大事」って、言葉で言うのは簡単なんです。
だけど、実現は本当に難しい。PASS THE BATON MARKETはその「実現の実例」になってくれていて、THE CAMPUSで開催していることが、もはや「コクヨらしさ」になってきています。

スクラムを組もう。
一つの企業で何かをする時代は終わった
スクラムを組もう。
一つの企業で
何かをする時代は終わった

黒田:この2、3年を通じて、僕らとしてはもう一歩二歩、PASS THE BATONと踏み出したいと思うようになりました。いろんなアイディアや議論があったんですけど、最終的には、ビジネスの力で社会課題を創造的に解決するケースを増やしたいと思ったんです。野崎さんたちは表面的な解決じゃなくて、「本質的な課題解決」を進めているのでハッとさせられます。

野崎:僕たちも、もともとPASS THE BATON MARKETの場所としてここを選んだのは、やっぱり「コクヨさんだったから」です。規模はちがうけど価値観が近い。
企業規模が大きくなると失われるものもあるし、逆に、小さいから志せないこともあると思う。だから、補完し合える。一つの企業だけでなにかを成す時代はずいぶん前に終わったと思います。リソースの共有だけでなく、価値観の重なりから、より大きなムーブメントを作りたいです。

黒田:コクヨは、これまで、インフラ的な立ち位置で、社会とお客様との関係をつないできました。そこで気付いたのは、自分たちの商売を自分たちだけで進めていくと、新しい人との出会いや、新しい価値づくりが狭まってしまうということ。
企業同士が組み合わさることで、関係人口が増えたり、社会に対して違ったアプローチで向き合えたりするな、と。僕らがご一緒することで、社会課題を解決するネットワークを広げていきたい。最初は我々2社だけど、5年後とかは20社にしたいですよね。

野崎:ユニット名にどんどん社名が足されていくみたいな(笑)。社会課題の解決って、「正しさ」と「楽しさ」が同居するのが大事ですよね。大義と、自分たち自身のやりたいというモチベーションのどちらも必要で。コクヨさんも「be Unique.」を掲げていらっしゃいますが、ウィットを差し込んで、ステークホルダーみんながワクワクしないと、課題解決って前に進まないし、企業を超えたパートナーシップによって、より勇気が持てる社会が作れるんじゃないか。そんな希望を持ってます。

地域のユニークネスを、価値として巡らせたい 地域のユニークネスを、
価値として巡らせたい

黒田:事業テーマとして、「働く」と「暮らす」と「学ぶ」があるんですが、そこがどんどん多様化していくなかで「地域」そのものがもつ可能性に気付かされてきました。
全国の販売店さんとの長いお付き合いの中でも実感していますが、文化も産業も、画一的な都市部より、地域のほうがもともとバラエティに富んでいる。
それでも都市部にヒトもカネも集まってくるので、地域の魅力やユニークネスが全国に伝わりづらかったり、産業的に厳しいなど経済的な持続性に課題がでたりしています。その土地ならではの文化や産業が豊かになることは、この世の中全体を活性化することにつながる。
PASS THE BATONは、各地の企業とタッグを組んで倉庫に眠る商品を流通させることで新しいものづくりを応援することや、地域の伝統的工芸品をリライトする取り組みを行っていますが、私たちも「新たなリテール」の模索と、地域の価値を巡らせていきたいと思っています。

野崎:地域という単位に限らず、僕たちは課題を解決していくときに自立性、主体性がすごく重要だと考えます。PASS THE BATON MARKETでいえば、共感してくれるお客様がいて、志を共にする出展者さんがいて、多くのステークホルダーの意思と、装置と仕掛けが組み合わさって、 そういう状況が総合芸術のように成り立っていく。ステークホルダーそれぞれに自立性があるから、複雑な課題を高次元で解決ができる。僕たちがやっていることは「状況のデザイン」です。
我々も日頃、コンサルティングやプロデュースを行っていますが、街とか地域の空気を大切にして、そこにしかないユニークネスを拾い上げて、増幅させていきたい。
地域には、可能性が満ちている。自立性、主体性が持続可能性のキーワードだと思うから、「やや前のめりな伴走者」として共に走りたいなと思っています。

黒田:前のめりといえば、弊社は今、神山まるごと高専とのパートナーシップを組んでいるんですけれど、これもうちの現場の社員が「こんなに価値があるのに、逆になんでコクヨがやらないんですか?」って僕に問うわけです(笑)。「参画しない理由が、逆にないです」みたいな。

野崎:社長の黒田さんが完全にタジタジなのがいいですね(笑)。
結局のところ、そういう姿勢がプロジェクト推進力に直結していると思います。

黒田:社長が言ったからでなく、メンバーが自発的に前のめりに進めている。最近、戸越銀座でも新しい地域プロジェクト「THE CAMPUS FLATS Togoshi」が始まりましたが、これもメンバーが自分たちの意思でプロジェクトを推進している。今回のプロジェクトも、社内の部署横断で進めていますが、この前のめりな主体性を地域や社会に還元していきたい。
僕らは、長期ビジョンで「自律協働社会」を掲げています。「自律」と「協働」って、実は矛盾していて、僕たちが目指すのは「自律 but協働」という状態です。価値観の多様化や変化が進むと、人と人を分断していく可能性もはらみます。一方でその多様な価値観を互いに尊重するときには「律」の方の「自律」も重要で、企業や組織を越えて協働する社会を模索していくことが、今のコクヨが目指すところだと思っています。

野崎:僕たちも「選択肢が豊かな社会」を作りたいと常々思っています。どの時代も、やっぱりもの以前に想いがある。ものが流通することは想いが流通すること。それがビジネスの原初なはず。株式会社というあり方だって、もともと共感を見える化して、価値交換を促すものだったわけですよね。ビジネスを通じて、価値や想いを世に巡らせる。そんな基本に立ち返って、このプロジェクトで出会う企業や自治体さんの価値を巡らせていきたいです。

明るい未来をヨコクしたい。
バトンを受け取る準備、できてます。
明るい未来をヨコクしたい。
バトンを受け取る準備、
できてます。

野崎:今日はユニット名を決めたいので、まずシンキングタイムを。

黒田:難易度高いですね~(笑)。いくつか案は持ってきたので、書いてみましょうか。

野崎:こんなところに、いいペンといいノートがありますね(笑)。

野崎:コクヨとバトン、っていうシンプルなアイディアもいいなって。

黒田:コクヨそのままよりも、ヨコクがいいですね。僕らの企業のパーパスが「ワクワクする未来のワークとライフをヨコクする」なんです。 この、先駆けてヨコクするっていうところがポイントなんです。

野崎:昔CMありましたよね。コクヨのヨコク♩っていう。

黒田:結構みなさんに覚えていただいていますよね、あのCM。 やっぱり、今回は未来のための取り組みだから、ヨコクかな。

野崎:バトンのヨコクとかですかね。バトンをつないで、明るい未来をヨコクしていきたい。

黒田:うーん、かなりいいんじゃないでしょうか。

野崎:これは、決まりましたね。黒田さんのその字の感じ、いいですね。

「バトンのヨコク」、始まります。
皆様からのご相談をお待ちしています。(つづく)
「バトンのヨコク」、始まります。
皆様からのご相談を
お待ちしています。
(つづく)